「休演」「景カット」「代演」といったキーワードがとかく話題の中心となってしまった感のある今公演「Tick-Tack」。それでは舞台や演者が浮かばれない…というわけで、ナナメでもいいからステージを楽しく観てみる「エトセトラ」。オリジナルメンバーに敬意を表してお送りすることにしたい。
【公演全体】
■ロビー掲出の香盤表などに今年の正月公演「夢 -DREAMS-」から表示されていた「各景タイトル」が消滅。
再び景モチーフなどに頭を悩ませなければならなくなった。
■その香盤表のフォントがこれまでとは変化。前公演までは「教科書体」だったものが、
今公演から「明朝体」に変化し、フォーマットも一部変わっているところが見受けられる。
このフォント変更は、後述する「中休憩名作劇場」でも見受けられることから、
何らかの制作態勢の変更を反映しているものであるという穿った見方もあるようである。
今公演から「明朝体」に変化し、フォーマットも一部変わっているところが見受けられる。
このフォント変更は、後述する「中休憩名作劇場」でも見受けられることから、
何らかの制作態勢の変更を反映しているものであるという穿った見方もあるようである。
(「『Once Upon a Dream』2nd」香盤表より引用)
【1景=吉沢伊織】
■本景のモチーフは「ヴァンパイア」。
■今公演での“流行”は、「行きの移動盆上で2曲目終了」という形か。本景と4景が同じパターンに。
【2景=武藤つぐみ】
■武藤と競演の骸骨くん、武藤は「ヨシキ」と命名。命名由来はこれか。
■その「ヨシキ」のピアノの弾きっぷりが、初日や2日目よりも8日目の方が随分とアグレッシブに変化。
■このところ回る気配をずっと見せていなかった移動盆。
「ヨシキ」を載せて時計方向へ90°、反時計方向へ60°ほどの回転を久しぶりに見せている。
移動盆が回ったのは、2013年9月~10月公演「The Dream Continues」4景“ゴムの檻”
(「1st」木村彩/「2nd」小野今日子)以来ではないかと思われる。
その時も今回も、奥の収納位置からわずかに引き出した場所での回転操作であることから、
「わずかに前進させた位置なら回転可能」説が導き出されるが、
一方で360°の回転はさせていないことから、
「時計回り・反時計回りの一定角度までは可動可」説も棄却できない。
「ヨシキ」を載せて時計方向へ90°、反時計方向へ60°ほどの回転を久しぶりに見せている。
移動盆が回ったのは、2013年9月~10月公演「The Dream Continues」4景“ゴムの檻”
(「1st」木村彩/「2nd」小野今日子)以来ではないかと思われる。
その時も今回も、奥の収納位置からわずかに引き出した場所での回転操作であることから、
「わずかに前進させた位置なら回転可能」説が導き出されるが、
一方で360°の回転はさせていないことから、
「時計回り・反時計回りの一定角度までは可動可」説も棄却できない。
【3景=浜野 蘭】
■“10年選手”“10年選手”“20年選手”というベテラン勢による日舞をベースにした群舞。
その鮮やかな扇子さばきとともに酔いしれたい。
【4景=沙羅】
■誰もが驚いた「2個出し」。奇数回は「女ver.」、偶数回は「男ver.」を演じる。
これまでも、複数種類の小道具やベッド構成などを準備して演じ分けるケースは存在したが、
群舞パートから別バージョンになったケースは、筆者の記憶にない。
【中休憩】
■「マナームービー」で、前公演「Once Upon a Dream」では“フルター杏野”が
しれっと座っていて「8人出演」になっていたが、本公演でも「骸骨のヨシキ」が参加して“8人”に。
■「ハンプティ・ダンプティ武藤」と「アリス観月」の間で交わされる哲学的会話は、
イギリスの童謡「マザー・グース」が原典と思われる。
イギリスの童謡「マザー・グース」が原典と思われる。
Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together again.
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
Couldn't put Humpty together again.
ハンプティ・ダンプティが塀に座った
ハンプティ・ダンプティが落っこちた
王様の馬と家来の全部がかかっても
ハンプティを元に戻せなかった
ハンプティ・ダンプティが落っこちた
王様の馬と家来の全部がかかっても
ハンプティを元に戻せなかった
(Wikipedia「鏡の国のアリス』より、ジョン・テニエルが描いたハンプティ・ダンプティ」より引用)
【5景=赤西 涼】
■最近の傾向に反して、特に「予告編」などを入れない実直な後半スタートを切る。
【6景=藤咲茉莉花】
■下手上方の「時計」が指し示す時刻には、
大きく分けて「リアルタイム時刻」と「固定時刻」の2種類が存在する。
景カット等がなく公演が順調に進行している場合は、1回目は「02時09分」、2回目「04時09分」、
3回目「06時09分」、4回目「08時09分」、5回目「10時09分」となるよう、
毎回、投映設定を変えながら「リアルタイム時刻」を指すように準備しているとのこと。
一方、景カットで6景が通常公演より早い時刻の開始となってしまうときは、
リアルタイム表示をあきらめ、毎回「06時09分」の「固定時刻」での表示となっている。
■これを可能にしたのが、3回目の6景開始がちょうど「06時09分」に掛かっていることが発端。
もちろん「偶然」らしいが。
もちろん「偶然」らしいが。
■しかしこの時計の秒針は、秒を刻まずに連続的に動いていく「スムーズ運針」のため、
残念ながら公演名のような「チックタック」という音は出そうにない。
残念ながら公演名のような「チックタック」という音は出そうにない。
■「浅草ロック座公式ホームページ」ではバックダンサーとして「吉沢伊織」の名前が入っているが、
ロビー掲出の「香盤表」には名前が見当たらない。
「ラビット吉沢としてオルゴール人形1体の撤収のために出演あり」が正解。
ちなみに出演時間は「約13秒」で、これは記録的な短さである。
ちなみに出演時間は「約13秒」で、これは記録的な短さである。
【7景=観月 奏】
■本景群舞パートは「不思議の国のアリス」に登場するキャラクターの特性を
うまく織り込んだ創作劇となっている。
■途中で「ホワイトラビット吉沢」が生声で呪文のように唱えるのは、バレエ用語。
それに合わせて隣で「アリス観月」がそれをなぞっている模様。
といっても筆者が聞き取れたのは「アラベスク」「ジュテ」「クッペ」「グリッサード」「スッス」
ぐらいなのだが…。
それに合わせて隣で「アリス観月」がそれをなぞっている模様。
といっても筆者が聞き取れたのは「アラベスク」「ジュテ」「クッペ」「グリッサード」「スッス」
ぐらいなのだが…。
■では、本景の物語を筆者なりの解釈を交えてたどってみることにする。
****************************************
ホワイトラビット吉沢の後を追って不思議の国に迷い込んだアリス観月。
そこにトランプの兵隊を連れたクイーン・オブ・ハート赤西が「首を刎ねるぞよ!」と
恐ろしげなジェスチャーを繰り返しながら登場する。
ホワイトラビット吉沢の後を追って不思議の国に迷い込んだアリス観月。
そこにトランプの兵隊を連れたクイーン・オブ・ハート赤西が「首を刎ねるぞよ!」と
恐ろしげなジェスチャーを繰り返しながら登場する。
クイーン赤西「ん?おぬしら何者?首を刎ねるぞよ!」
クイーン赤西に見つかってしまったラビット吉沢とアリス観月。
そこでラビット吉沢が、珍しい時計でクイーンの気を引こうとする
そこでラビット吉沢が、珍しい時計でクイーンの気を引こうとする
ラビット吉沢「女王さま、いかがですか、この時計は?」
クイーン赤西「おおっ!これは珍しい時計…」
クイーン赤西「おおっ!これは珍しい時計…」
ひとときの間、時計に夢中になるクイーン赤西。
その隙に、トランプの兵隊と仲良くなろうとするアリス観月。しかし…。
その隙に、トランプの兵隊と仲良くなろうとするアリス観月。しかし…。
クイーン赤西「そこの2人!こんなもので私をだまそうとしてもムダだわい!首を刎ねるぞよ!」
と2人に詰め寄っていく。
そこでトランプの兵隊の一人が、女王の機嫌を直そうと、ある「遊び」を提案する。
トランプの兵隊「女王さま、そんなことより、あれ、あれをやりませんか?」
その遊びとは、女王の振りに合わせて踊ってから、いったん目を閉じてポーズを作り、
そのポーズが女王のポーズと違っていたら「負け」という「決めポーズ仲間はずれゲーム」。
そのポーズが女王のポーズと違っていたら「負け」という「決めポーズ仲間はずれゲーム」。
1回戦では「スペードの兵隊」が違うポーズをして負け、2回戦では「ハートの兵隊」が負けてしまう。
そして3回目はラビット吉沢が負けたため、女王の機嫌を取ろうと、
とっさにアリス観月とともにバレエレッスンを披露する。
ラビット吉沢が次々に唱えるステップやパの用語に合わせて、見事にアリス観月が舞ってみせる。
そして3回目はラビット吉沢が負けたため、女王の機嫌を取ろうと、
とっさにアリス観月とともにバレエレッスンを披露する。
ラビット吉沢が次々に唱えるステップやパの用語に合わせて、見事にアリス観月が舞ってみせる。
続いてトランプの兵隊にも舞わせようとするが、ラビット吉沢、気の抜けた声で適当にコール。
そのやる気のない態度が再びクイーン赤西の怒りに触れる。
そのやる気のない態度が再びクイーン赤西の怒りに触れる。
クイーン赤西「二人とも、首を刎ねるぞよ!」
そこをトランプの兵隊がなだめて、クイーン赤西も加わってのバレエレッスンをすることになった。
ところが、大きく伸び上がるような動きで首や背中がつってしまい、動けなくなるクイーン赤西。
ところが、大きく伸び上がるような動きで首や背中がつってしまい、動けなくなるクイーン赤西。
クイーン赤西「いたた、あいたたた…」
そんなクイーン赤西の腕を支えながら、外へ連れ出し、マッサージを施すラビット吉沢。
腰から背中、首から後頭部を念入りに揉みほぐすと、つりが収まり、痛みから解放されるクイーン赤西。
ようやく機嫌も直り、全員で一つの輪になっての大団円を迎えたのだった。
腰から背中、首から後頭部を念入りに揉みほぐすと、つりが収まり、痛みから解放されるクイーン赤西。
ようやく機嫌も直り、全員で一つの輪になっての大団円を迎えたのだった。
おしまい。
****************************************
****************************************
【フィナーレ】
■メンバー紹介での役名をまとめておく。
◎ハンプティ・ダンプティ=武藤つぐみ
◎フラミンゴ=(ロック座ダンサーズの4人)
◎ホワイトラビット=吉沢伊織
◎マッドハッター=浜野蘭
◎キング・オブ・ハート=沙羅
◎クイーン・オブ・ハート=赤西涼
◎チェシャキャット=藤咲茉莉花
◎アリス=観月奏
■フィナーレで登場するキャラクターたちの中に「仲間外れ」が1人いる。さて、誰か。
答えは「ハンプティ・ダンプティ」。そのほかのキャラクターは「不思議の国のアリス」に登場するが、
「ハンプティ・ダンプティ」だけは「不思議の…」には登場せず、
「鏡の国のアリス」で登場するキャラクターである。
「ハンプティ・ダンプティ」だけは「不思議の…」には登場せず、
「鏡の国のアリス」で登場するキャラクターである。
■「キング・オブ・ハート」を演じる沙羅は、
2010年3月~4月公演で「クイーン・オブ・ハート」を演じたことがあり、今回で夫婦役をコンプリート。
さらに2014年5月~6月公演「PEACE LOVE ROCK 2014」では「マッドハッター」も演じているので3冠達成。
2010年3月~4月公演で「クイーン・オブ・ハート」を演じたことがあり、今回で夫婦役をコンプリート。
さらに2014年5月~6月公演「PEACE LOVE ROCK 2014」では「マッドハッター」も演じているので3冠達成。
■「マッドハッター浜野」のピンクの衣装は、2012年5月~6月公演「All you need is LOVE」7景の
「リンゴ・スター」役(「1st」小嶋実花」/「2nd」上原愛里紗)で用いられたものの再活用と思われる。
「リンゴ・スター」役(「1st」小嶋実花」/「2nd」上原愛里紗)で用いられたものの再活用と思われる。
■その「マッドハッター浜野」の帽子に書かれた「420/69」という数字。「69」はいいとして「420」とは何か。
これはアメリカで「大麻」を表すスラングとのこと。その語源には諸説あるようだが、
これはアメリカで「大麻」を表すスラングとのこと。その語源には諸説あるようだが、
「1970年代初め、カリフォルニア州サンラフェル (San Rafael) のサン・ラフェル高校の生徒の集団が、
毎日放課後の午後4時20分、大麻を吸う目的でルイ・パスツールの銅像の前で会っていた。
この時間に由来しているという説がもっとも広く受け入れられている。」
(Wikipedia「420(大麻)」の項より引用)
とのこと。
■ちなみに、2014年5月~6月公演「PEACE LOVE ROCK 2014」3景で
沙羅が「マッドハッター」を演じたときの帽子の数字は「693」であった。
沙羅が「マッドハッター」を演じたときの帽子の数字は「693」であった。
■「フラミンゴ」の胸に手を伸ばすなど“ちょっとエッチな恐妻家”「キング・オブ・ハート」と、
“わりと気分屋”「クイーン・オブ・ハート」の“夫婦げんか”が楽しい。
“わりと気分屋”「クイーン・オブ・ハート」の“夫婦げんか”が楽しい。
■観月がテーブルの上に横になってオペラ幕が閉まると音楽も終わり、
“初めてさん”などは「終わりかぁ」と席を立とうとするが、
この時、客電は暗転していないことに注意。公演終了時には、客席もいったん暗転するのが不文律である。
絶妙な間を取って、音楽がリピートし、オペラ幕が半開になってのカーテンコールがスタートする。
この時、初日1~4回目は「キング・オブ・ハート沙羅」と「キング・オブ・クイーン赤西」は
別々に1人ずつの登場であったが、初日5回目以降は、2人で手を繋いでの同時登場に変更されている。
“初めてさん”などは「終わりかぁ」と席を立とうとするが、
この時、客電は暗転していないことに注意。公演終了時には、客席もいったん暗転するのが不文律である。
絶妙な間を取って、音楽がリピートし、オペラ幕が半開になってのカーテンコールがスタートする。
この時、初日1~4回目は「キング・オブ・ハート沙羅」と「キング・オブ・クイーン赤西」は
別々に1人ずつの登場であったが、初日5回目以降は、2人で手を繋いでの同時登場に変更されている。
末文ではあるが、これ以上の休演者や故障者が出ないことを、ただただ祈るのみである。
(敬称略・観劇日:平成27年10月18日(日))